1. トロンボーン協奏曲的「悲愴」
  2. 情熱的「オルガン付き」
  3. 破滅的「革命」
  4. 唄うコントラバス
  5. 録音の魔術!!
  6. 理想の実現
  7. 唸り声も音楽!?
唸り声も音楽!?

 最近ライブのCD化がはやっていますね。生きた音楽が好きな私としては大歓迎なんですけど気になりませんか?あの「うなり声」??
 好きには好きなんですよね。
 ただあんまりにも激しいのはどうかと。

 演奏中に指揮者が出す声は今までのレコーディングではカットされるのが普通でしたから,ほとんど聴くことができなかったはずですが,最近のライブ盤特に放送音源の一発演奏や海賊版では音声を消し去ることは無くそのまま入っているので結構免疫が出来てきてはいるんではないでしょうか?
 有名な人ではチェリビダッケがいますが,私には彼の雄叫びのような気合いのかけ声はかける位置に理解できるときと出来ないときがありました。レナード・バーンスタイン(指揮)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 マーラー交響曲第9番
 バーンスタインもその派手な指揮とともに唸る指揮者でしたが,彼の場合はやはり音楽に於ける表現上理解できる位置(悲劇や美しさの頂点に達したときに入るため息に似たもの)に入っていてその唸り声に慣れると入っていない時に物足りなさを感じるほどでした。
 有名なベルリン・フィルとの一期一会のマーラー交響曲第9番では長くFMのエアチェックで親しんできた人達に,DGで発売されたものには唸り声がカットされていて音楽の魅力が失われていると言わしめていました。

 今回購入したコバケン(小林研一郎)指揮の日本フィルによるブラームスの交響曲第2番にはそんな問題を提起するだけの凄さが有ります。
 私は学生時代コバケンの指揮で演奏をしたことがあるのですが,演奏者側から見た彼は素晴らしい指揮者でした。
 彼が入ってきたときから練習の雰囲気に緊張感が生まれ,音楽がはっきりと変わるのです。練習に入ると,音楽はすっかりコバケン・モードです。
 劇的部分での燃え方,美しい部分の歌わせ方は感動を覚えましたし,演奏表現に対する言葉の的確さは脱帽物でした。
 彼は,練習・本番を通じて音楽の雰囲気をその指揮棒と独特の呼吸音,そして唸り声で伝えていきました。そのときのその唸り声はその音楽を作っていく上で必要不可欠でしたし,演奏者側からは何も気にならなかったのです。我々アマチュアに対してここまで音楽をやってくれる彼の熱中ぶりに,かえって「音楽をやったな〜。」という満足感すら感じたものでした。
小林研一郎(指揮)日本フィルハーモニー管弦楽団 ブラームス;交響曲第2番  ちなみに私の誕生日の演奏 ここ数年CANYONレーベルや自身の名前を冠したEXTONレーベルでいい仕事をしている江崎氏は,小林研一郎にも相性がいいらしくレコーディングに恵まれてきたとは言い難い彼の録音を積極的に進めています。
 彼のファンにはとても良い時代になったものと評価したいのですが,特に彼のファンでもなく,今回のCDのように結構良い評価を得ているものを初めての彼の芸術として聴くことになる人にはどんな風に聴こえるのかチョッと心配(^^;;になってしまうのです。
 とにかく始まってから唸りっぱなし(^^;;。
 音楽は彼流の溜の有る振幅の大きいもので「コバケンのブラームス」を堪能できるんですが。音楽に熱が入ってくるとだんだんと声も・・・。特に弦楽器が唸るようなffを弾くときには最高潮に達します。 サウンドはサントリー特有の音響に加え,日本のオーケストラの特徴である繊細な美しさを余すところなく捕らえておりEXTONトーン(江崎トーン)とも言えるナチュラルさで好感が持てます。

 ライブ盤の発売が増えれば増えるほど,指揮者や奏者の出すこの手の音の処理,観客の拍手や咳払いの処理について考えなければならなくなってくることでしょう。