今月のおすすめCDについて
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1999.
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 ようやく買えたぞい! 「スプーン」だぞう!

  メジャーレーベルでは彼女のやりたいことの半分もできていなかっただろう。
   しかし彼女の大きすぎる才能はその縛りの中でも縛りきれずあふれ出ていた。
  デビュー・アルバムを何の気なしにレンタルしたのも何かの運命。
  夏の夕立が気持ちよく降ってきた。
  古い木枠の窓を開け,雷轟く中で6畳一間の下宿に置かれたスピーカーが歌い始めた

  「ムーンライトパークに 僕らは解き放たれた
 道は青白く曲がりくねってここへ戻るよ・・・。」

  今までに聴いたことのない表現力を持ち,伸びやかでいて哀しみを含んだ声色。力強さと儚さが瞬時に入れ替わるそのボーカルに瞬時に虜になってしまった。
  バックを盛り上げるバンドも抜群のセンスで彼女のボーカルに絡むサックスを要としたすばらしいもの。
  現実を違った角度の視線で見る歌詞のファンタジー,どこか懐かしくそれでいて初めて聴くメロディー達。
 紛れもない天才だと思った。そしてその思いは今も変わらない。
 何度も行きたかったのにそのたびに何故か行けなかったライブ。
 テレビで「たま」と競演し,素晴らしい世界を見せた「風に吹かれて」は今でも胸に残っている。
 しかしその大きな才能もメジャーな人気は勝ち得ず,彼女はメジャーから去っていった・・・・。

  だが,彼女の才能は埋もれてしまうには大きいもの。
 彼女にうたれたファンは私だけではなかった。
 また,彼女の才能を認め,惚れ,活動を続ける手だてを作る人々,彼女と是非共演したい人々が,そして彼女の歌の世界をいつまでも見続けていたい人が一緒に「うた」を歌い出していた。
 素晴らしい事ではないか。
 彼女は今素晴らしい仲間に出会い,「うた」を歌い続けている。

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スプーン さねよしいさこ スプーンはインディーズで出したカセットテープ「りんご水晶」以来のアルバム。
  「どんな風に変わってるんだろう?」とドキドキしてCDをかけた。

  今日も激しい夕立。

 「!」

 以前と変わらない,いや少し彼女の彼女らしさの強い詩がそこにあった。
 バックはリコーダーを主体としてベースにテューバが入っているどこかチンドン屋風,欧米風で言えばクレッツメル風な,サーカス団的な・・・。
 なかなか言い表現が浮かばないがそんなほのぼのとし,楽しくもの悲しい感じも出る素晴らしい世界を創り出す「栗コーダーカルテット」主催の栗原さんとその編曲。
  彼女は比類無い強力な世界を味方に付けて伸びやかに歌っていた。
  5曲目の「雨降りのうた」いいな・・・。この世界も彼女のものだ。
  コマーシャルベースでファニーな彼女の一面だけを取り上げられてはこれは分からない。
  以前のアルバム「手足」の「君に寄り添う」のような世界が好きな自分は,この曲を聴いて久しぶりに暖かい涙が溢れた。


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